2008年2月14日木曜日

『ジョン・ランディスの素敵な映画たち』(狼男アメリカン編)










 さて、前節に続き巨匠ジョン・ランディス映画に関してお話を。




 今回もコメディの流れで話を進めようかとも思ったけれども、ジョン・ランディスの別の顔も知って貰おうと思い、今回は「ホラー」テイストな作品を。



 以前書いた我らがマイコーの傑作アルバム『Thriller』の件(以前の記事では「セールス4000万枚以上」と述べたが、調べによると今現在このアルバムは全世界で累計1億枚以上のセールスを挙げてるそうな・・・異常だね。顔も異常だけど。)でタイトル曲「スリラー」のPVについて触れたが、このPVの演出をしたジョン・ランディス、そして特殊メイクを担当したリック・ベイカーがタッグを組んだ傑作映画



 『狼男アメリカン』(1981)


 について今日はいってみよう。



 『スリラー』PVより前に製作されたこの作品は、タイトルそのまんまなんだが「狼男」の映画。昔から西洋ではドラキュラ、フランケンシュタインと並び古典ホラーのアイコンとして認知されているキャラクターだけれども、簡単に言ってしまえばそれの現代版だな。



 傑作サディスティック・スリラー『HOSTEL』(2005:イーライ・ロス)が如くバックパッカーとして欧州を旅するアメリカ人青年が、イギリスの寒村で巻き込まれた事件から自身が狼男へと変貌していく事実に葛藤するという、実にシンプルな内容で、今では「現代ホラー(狼男映画)の名作」「ホラーファンなら避けて通れない道」と位置づけられてる。


 しかしながら、この映画の本当の面白さは「ホラー」な部分ではなく、ジョン・ランディスの演出による何とも可笑しさを誘う「コメディ」な部分にある。なので「ホラー映画」として鑑賞してしまうと時代の流れも加味すれば少し物足りない作品に感じるかもしれない。(現に評価は真っ二つ。無論当飯店は肯定派ですがね。)



 この映画を評価するに当たって、いくつかポイントがあるので挙げてみる。


 1:古典ホラー(伝統的ホラー)を崩壊させた演出 
 2:(当時は)リアル過ぎる特殊メイク
 3:遊び心のある会話
 4:お洒落な音楽




 (1)本編中如実に現れているわけではないが、この作品から現代のように「ホラー映画演出に対する姿勢は崩してもいいんだ!」という流れが出来たように思われる(というかそう評価されている)。



 (2)特殊メイク界の重鎮、リック・ベイカーのお仕事は素晴らし過ぎます。ノーマルなヤング白人が汚い狼男に変身する様をゆっくり、丁寧に、しかもリアルに表現していて、コレに関しては今でも充分に、イやそれ以上に堪能できる。因みにこの作品でリック・ベイカーはアカデミー賞特殊メイクアップ賞受賞しとります。あたりまえだ!






 



   狼男・・・っていうよりは、体毛濃い人だよね。この段階。

 (3)特になんだけど、主人公と相方役のグリフィン・ダン(今でも小汚いおっさんだけど、この時もかなり老け顔。)との拍子抜けしてしまう会話はホラーな設定であるにも拘らず可笑しくて仕方が無い。このグリフィンは冒頭に死んでしまい、主人公の夢?の中でしか登場しないのだが(死んでるから完全にゾンビメイクね。)全く怖くない。グロいけど。寧ろ笑う。




右のヤングがグリフィン君。

 


 (4)これはもう、ジョン・ランディスの音楽チョイスが光る。狼男=月のイメージから、それに纏わる選曲が全編を彩るんですがこれがもう。秀逸。オープニングの”ブルームーン”から始まり、様々な曲が流れるのでありますが、この辺はあんまり詳しく無いので止めとく。でも本当にぴったり。


 上記の他にも特筆すべき点があるのだとは思うんだけど、やっぱりこの4つは外せないと思うな。これだけで評価が高まっているとは思わないけれども、少なくともこれ等は評価ポイント。



 逆に。「ホラー映画」的要素で評価されるべき部分はあるのか?って話になるんだけれども、コレがねぇ。なんとも。確かにグロテスクな部分が突然出てきたり、リック・ベイカーの仕事のおかげでリアルな描写があったり・・・と決してホラー的要素が無いわけでは無いんだけども、どうしても其処は「コメディの巨匠」が故、物足りなさを禁じえないのも否めない。いわゆるホラー映画にありがちなショッキングなシーンと言う物を殆ど排絶したような演出なので(じっくり魅せる部分も若干あるけれど)、そこがホラーファンに対しては頂けなかったのかも知れないな。そこが評価が分かれるポイントかも。




                「ギャー」な胸毛と手の様子。


 主人公がなんとも情けない奴で、冒頭で事件に巻き込まれてから悪夢に魘されて入院中も看護婦に甘えっぱなしで、退院してもヒモが如く看護婦宅に入り浸り、夜になると動き回り・・・・となんとも。感情移入は出来ないよね。でも其処がいいのかも。



 甘えっぱなし且つヤる事はしっかりヤる。
  ある意味立派な「狼」男。




 終盤やっぱり狼男に変貌した主人公はロンドンの中心街を大暴れしながら周囲の皆様に多大な迷惑を及ぼし、『ブルース・ブラザーズ』宜しくカークラッシュの嵐をも巻き起こし、多くの人の命が奪われてしまいます。この辺はホラー映画だったことを思い出させつつ、更にジョン・ランディスらしい派手で大袈裟な演出で味があって好き。




 因みにこの作品。フランス悪女の代表格ジュリー・デルピー主演で

 『ファングルフ 月と心臓』(1997:アンソニー・ウォラー)



 というリメイク?亜流の続編?が出ております。がこっちは駄作。



  表向きはホラーでありながら、ふたを開ければ可笑しい要素もあり、そのくせ妙にリアルでやっぱりホラーだと気づかされるこの作品。この作品を経て「スリラー」、そして気がつけばやっぱり肌に合っていたんだろうコメディ畑に戻っていく(?)ジョン・ランディス。この作品はそんな彼にとって作家としての才能を世間に見せ付ける良いきっかけであり、また自分の限界を知る良いきっかけだったのかも知れません。


 ※余談ではありますが、このジョン・ランディス監督。


 「See you next wednesday!」


 というフレーズが大好きで自身が手がける映画には必ずどこかに出てきます。(美術だったり台詞だったり・・・出所は様々。)これを探してみるのも「ジョン・ランディスの素敵な映画たち」を楽しむ方法の一つかもしれませんね!





 次回はコメディに戻ったジョン・ランディスの作品をご紹介。



 でわでわー。

 

4 件のコメント:

デカ さんのコメント...

いいね。最近。

興味深い投稿が続いています。

童貞ウォーズ今週末見ます。

ウンチク検事 さんのコメント...

どちらかというとテリーさんのもうんちく飯店に改名してもよいのではないかと思う。

にっこりテリー さんのコメント...

 えー。いややぁ。
 もちっとしたら格安DVDの話するケン。

匿名 さんのコメント...

アカデミー賞についてよろしこ。